ゆるゆるメディア論

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陸軍の教科書からはじまった 「情報」という言葉をめぐるアレコレ

情報化社会、情報飽和など、いろいろな場面で「情報」という言葉を使いますが、情報という言葉はどこからきたのでしょう。「情報」という言葉の起源と、定義をめぐるアレコレをまとめてみました。

「情報」という言葉は陸軍の教科書からはじまった

 日本で「情報」という言葉が最初に使われたのは、1876年に刊行された陸軍の教科書『仏国歩兵陣中要務実地演習軌典』においてだと知られています。これはフランスの軍事教育用の教科書を翻訳したもので、フランス語の「renseignement」に「情報」という訳語をあてたのが最初の用例といわれています。

 この本のなかで、情報は「敵の情報を報知すること」を意味していましたが、やがて「スパイ」や「諜報」を連想させる意味に広がり、第二次世界大戦の終了まではこのような軍事色のある言葉として使われました。

しかし、戦後に情報理論の父と呼ばれるクロード・シャノンさんの情報理論が日本に導入されると、「information」の訳語として「情報」が定着するようになりました。シャノンさんはビットという情報量の導入により、情報を定量的に扱えるように定義したひとです。 

その後、シャノンさんの情報理論はコンピューターや情報処理技術の発展に貢献し、シャノンさんは20世紀において最も世の中に影響を与えた科学者のひとりといわれています。

sakuraimac.exblog.jp

honz.jp

「情報」に関するさまざまな考え方

シャノンさんが情報を定量的に図る方法を導入した一方で、情報のもつ意味に視点をおいて情報の意義を考えたのが梅棹忠夫さんの「情報産業論」です。本書で論述している情報産業論は、テレビやラジオなどのマスメディアを対象としたものでした。

ちなみに「情報産業論」を含めた複数の論文などをまとめた書籍『情報の文明学』は、ほぼ日の糸井重里さんが「知の大予言書」と帯を書いており、ほぼ日でも社員に配られているそうです。僕もほぼ日で紹介されているのを機に読んだことがあるのですが、非常に面白かったです。

・参考記事:ほぼ日刊イトイ新聞 - ほぼ日ニュース  

また「ハトを訓練し、ピカソの絵とモネの絵を区別させる」研究でイグノーベル賞を受賞した渡辺茂さんは、1968年に著した『認識と情報』で下記のように説明しています。

情報とは、区別である。赤い花をその他のものから区別できれば、そこに赤い花という情報がある。人間の感覚にたいしても、心の動きにたいしても、その他、森羅万象何にたいしても言えるのあるが、そこに情報があるということは、そこに区別があるということに他ならない

渡辺さんは心理学の立場から鳥の行動を研究・分析し『鳥脳力』という本も書かれています。インタビュー記事を発見したので紹介します。ちなみにハトだけではなく、マウスも絵画を見分けられるらしいです。

www.athome-academy.jp

 このほか日本のコンピュータのパイオニアと呼ばれる高橋秀俊さんは、1971年の東京大学公開講座「情報」で下記のように説明しています。

情報とは一体何かという問いに、一言で答えるならば、それは「知る」ということの実体化である。つまり、われわれがあるものについて 「知る」ということは、何かしらを得ること、何かを頭の中に取り込んだことである。その「何かしら」を われわれは情報と呼ぶのである。

 おわりに

趣味で情報学を勉強しているのですが、テキストで出てきた「情報とは」の箇所をふくらませて記事にしてみました。年号や人名に関しても基本的には、すべて教科書などを参考にして書いています。また何かまとめたい項目があったら、まとめたいと思います。

 

下記、今後読みたい本もふくめて関連書を紹介しておきます。

情報の文明学 (中公文庫)

情報の文明学 (中公文庫)

 
鳥脳力―小さな頭に秘められた驚異の能力(DOJIN選書32)

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インフォメーション―情報技術の人類史

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「情報」を学び直す (NTT出版ライブラリーレゾナント)

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